「俺は」


言い残したことを、この世に言い置くように。神父に、自分の本当の気持ちを白状するかのように。


「桐堤紅蓮の弟で、良かったと思ってる」



遥を殺されて許せなかった。

今、冷静になって考えてみる。

紅蓮は悪くないのだ。

上からの命令に逆らえばどうなる?自分も殺されて、一家諸とも処刑という、現代は古代じみた時代なのだ。


人間の命を秤に掛けるのは赦される行為ではない。

けれど、自分があいつを殺さなくてはいけない要素は何もなかった。

ただ、憎しみに突き動かされて。


漠然とした、社会に対する。