「桐堤梓。あんた、死ぬために来たのか」


自分の口から滑り出た言葉に、紫苑は驚く。

無意識のうちに投げ掛けていた問いだった。


「…そうだよ。復讐を完成させるためなら死んだって―…」

「…そうじゃない。あんたは、紅蓮に、」


殺してほしいと思っていたんじゃないのか。


「…馬鹿言うなよ!なんで俺があんな奴に…」

「じゃあ、お前はどうしてあの時泣いた?

お前はどうして紅蓮を殺して泣いた?」




答えられない隻腕の暗殺者に、一つ溜息を落とした。


「…まぁ…いいか」


ダガーを、彼の首に、突き付ける。

横に引けば、桐堤梓の命は終わる。

本当は殺す前に、懺悔させておきたかったが。もう、どうでもよくなってしまった。





鉛色の空から、雫が落ちて来る。