「…その程度で廃墟の王に挑むだと?あんたは少し現実を見ろ!」

わざと、挑発のつもりで、桐堤梓の右頬を切り裂く。
血が傷口から溢れる。


『…その程度で私に挑むだと?貴様は少し現実を見ろ』
…左腕を奪った人間の言葉。
名前など、紅蓮の知り合いの名前など、もう覚えているはずがない。
確かに腕は確かだった。
政府の戦闘員なだけあった。
しかし。
俺は勝った。
スタミナ勝ちだ。

だから今回の勝負も、などと考えていた自分に馬鹿と言いたい。
敵は予想外に強敵だ。

紅蓮と並ぶ、いやそれ以上の実力があると思う。
打ち合って、直感した。

荊徒紫苑の本分は殺戮にある。


荊徒紫苑は、殺戮を楽しむ、


《ケモノ》だと。


余裕が出てきたのか、紫苑の顔に不敵で凄艶な笑みが浮かびはじめた。

これが運の尽き。
もうそうなったら、斬り殺されて血の雨になる未来しかない。

……それでもよかった。