荊徒紫苑はぼんやりと目を開ける。



いつもと変わり無い、灰色の空。



あぁ、


狂っている。


屍臭ばかりで嗅覚はとっくに麻痺した。

深紅ばかりで心はとっくに擦り減った。

悲鳴ばかりで恐怖なんてとっくに凍りついた。



そんな場所に居る自分自身も、もうとっくに狂っているのだ。


この手は何度、人の命を奪ったか。



この刃は何度、人の悲鳴を聞いたか。



数えるのも馬鹿馬鹿しい。

殺戮は日常茶飯事。

実力差などたかが知れている。


…この街で自分に殺せない者など、良くも悪くも存在しないのだ。