恨みの篭った声だったと思う。


何があいつをあんなに駆り立てたのか。


紅蓮はその後、俺に向けられた刃を庇ってナイフを折られ、…ニヤリと笑った口元を、よく覚えている。



俺無しで戦えば、瞬殺できた相手だった。



俺の、せいだ。




突き上げられたナイフは紅蓮の心臓を刔った。



血潮が吹き出して、



紅蓮の体はその名の通り、紅く染まった。




『……逃げろ、紫……苑』


狂気にあてられたあいつならお前さえも殺しかねないから。そう言いかけて、紅蓮はもう動かなくなる。


『………!』


戦えば良かったのかもしれないが、紅蓮が死んだ今、そんな気力は湧くはずが無い。



へたりこんだ姿勢のまま、繰り広げられる残虐な、恨みの篭った行為を、見ていた。