飲食店での業務が終わった頃には、すっかり街は夜に染まりきっていた。


夜の帳は廃墟を覆った。


月は雲に隠されている。


美しいほどに完全な闇が、人の死臭も叫びも飲み込んでしまう。


紫苑は一人回想する。



あの日もこんな夜だった。