『住むところ、あんのか?』



『…ないけど、別に困ってない』



『じゃあ俺のところに来い』



『なんで…』



『何でってそりゃ、こんな廃墟にチビっこが一人で居たら一発だからな。俺、これでも《廃墟の王者》って言われてるくらい強いんだぜ?』



『…………』



『しかもお前には生きてるってことの素晴らしさを教えてやんなきゃいけねぇしなぁ、はは』



『生きる…殴られたり蹴られたり斬られたり、犯されたり殺されかけたりすることか?』



『……違う。美味しいメシ食って、友達と笑って、感謝して。自分自身を守ることだ。こんな街でこんなこと言っても仕方ねぇけど…』



『…わからないな』



『とにかくだ。お前は今日から俺の《弟》な!俺、地方の…あー、廃墟じゃないところに、弟が居るんだ。だからお前とあいつも兄弟。こうやって世界は広がっていく』



『弟…世界……』



『あ、でも苗字とかは一緒だと命狙われやすいよな…紫苑、苗字分かるか?』



『…忘れた…』



『ん、じゃああとで考えといてやるよ。期待しないで待ってろ』



『…わかった』



『うし!じゃあ帰ろうぜ。…俺は桐堤紅蓮。きりづつ、ぐれんな。名前に二つも植物が入ってるなんて面白いだろ?』