「お前、あんなトコロで何してたんだ?」

大柄の男は気さくそうな顔でノゥンに話しかける。この顔からは盗賊なんて想像できない感じがする。

「アズートに向かう途中だったんです…。」

一瞬自分が旅行しているような感覚になった。しかし、目の前の気さくそうな男は紛れもない盗賊なのである。

「アズート?またあんな田舎に物好きだなぁ~!まぁ、俺らに見つかったのは運が悪かったな。」
大柄の男は豪快に笑いながらノゥンをバシバシと叩いた。

「バックス、その 子供 違う 普通。」

異形な姿をした男が片言で喋った。

「ノアール、どういうコトだ?」

ボスがノゥンの方へ振り返る。

「コイツ、変。ノアと同じ。でも、 ノアと全然違う。 2つ感じる。」
「2つだぁー?んだょ!それっ?」

金髪の男も近付いてきた。

「ノアール、“真実の目”をかけてくれ。」

ボスはそう言うとノゥンをノアールと向き合って座らせた。

ノアールは金色の目をノゥンに向け、静かに不思議な言葉を唱えだした。
(私の魔法は並の魔力では解けるハズがない。)
そう思いながらノアールの目を見つめたが、その金色の瞳に不思議な感覚を覚えた。

(懐かしい…?知らないのに知っている?…)

するとノゥンの髪が徐々に黒から白へ、そして輝く銀の髪になり目は翡翠のような綺麗なグリーンになった。

「なんだコイツぁ!?」
盗賊達はノゥンの不思議な姿に驚いた。

しかし、一番驚いたのはノゥン自身である。国一番と言われた自分の魔法がこんな簡単に破られてしまったのである。

「アナタはいったい!?なんなんですか?その姿は…」

ノゥンはノアールに詰め寄った。

「そぃつぁ、俺らのセリフよぉ!お前こそ、魔法使えるってこたぁ…神官か魔導師か?」

バックスがノアールからノゥンを突き放すと少し怒ったように聞いてきた。

「私は、ロゥナの神官です。貴方は見たところ盗賊のようですが、彼は…一体?」

ノゥンは落ち着いた様子で一言一言喋った。

「けっ!神官かょっ!どおーりでかしこまっちゃってるワケだぜっ!“私は”とか大人ぶりやがって…どうせお前みたいな奴らは自分が正しくて偉いとでも思ってんだろうよっ!」