「なんだお前?」

ノゥンがはっと気が付いたときにはすでに周りは盗賊達で囲まれていた。
「なんでぇ、まだガキじゃねぇか!」

周りの盗賊達は薄ら笑いを浮かべながらノゥンに言った。

「こいつも連れて行く。売り飛ばせば金になる。」

“ボス”と呼ばれていた男はノゥンを突き飛ばし、手下に縛らせた。

ノゥンにとって縄をほどき逃げ出すコトはそれほど難しくなかった。

しかしノゥンは思ったのである。

(盗賊も勇者も最初からそんな人物じゃなかったはずだ…。どうして盗賊になっていったのか?それが知りたい。)

大柄の男は、ノゥンをヒョイッと担ぎあげて、ボスの後ろを走りだした。
盗賊達はまるでネコのように真っ暗な森の中を走って行く。

10分ぐらいたっただろうか?目の前に少し木が開けた場所が見えてきた。

「なんだ…アレ………!?ドラゴン!?」

ノゥンは思わず声をあげてしまった。

物心ついたときから修道院暮らしだったノゥンにとっては初めて見るドラゴンだった。

「なんだお前?ドラゴンを知らないのか?アイツは俺らの相棒。飛竜“ゲイル”さ。」

大柄の男は気の良い喋りでノゥンに言った。

ボスがドラゴンに飛び乗り、続いて仲間たちが飛び乗る。

「またせたな、ゲイル。出発だ。」

ボスがそう言うとドラゴンは
「バサッ!バサッ!」

と翼を広げ2、3回羽ばたかせたかと思うとヒューンと星空へ舞い上がった。

「ヒャッホー!!今日は良い風だぜぇ!!」

金髪の男が奪った金品をジャラつかせながらボスに話しかけている。

ノゥンがふと自分の来た方角に目を向けると、遠くの方に微かな光の集合が見えた。

(アレがロゥナの街だろうか…)

自分の故郷を見つけるとノゥンは少し落ち着いた。
(今は周りの状況を確認しよう)

そう思い、辺りを見渡す。

まず、ノゥンの手は縛られおり大柄の男の後ろにいる。

盗賊たちはボスと呼ばれる男、金髪の男、異形な姿の男(?)、大柄の男の4人だけだった。

もっと大人数だと思っていたノゥンは少し驚きながらも、もぅ見えなくなった故郷をいつまでも見つめているのであった。