三人がノスリーに着いたときに、ローレンがノゥンに言った。

「ノゥン様、貴方が誰あろうとノゥン様はノゥン様です。…こんな私ですが何かあったらすぐに呼んでください。力になります。」

そして、深くおじぎをするとノスリーの町へと消えて行った。

「さぁ!ノゥン。オレ達も帰らな!はよシンにこの工具を渡したりたいわ!」

タカが明るく笑ったが、ノゥンは

「そうだね。」

と言うだけだった。




二人は鉄馬に乗り込み、シンの待つ家へと走りだした。

帰る間もノゥンは黙ったままだった。タカが色々と話し掛けたり冗談を言ったりしたが、どこか遠い目で相づちを打つだけだった。

ノゥン達が家に着いたのは、真夜中だった。

「二人共、お帰り。予定よりだいぶ遅かったなぁ?」

そう言って出迎えてくれたシンは眠たそうに大きなあくびをした。

「んで?どうやったんや?図書館の方にはバッチリ入れたやろ?」

得意気に言うシンに二人はバツの悪そうな顔をしながら見合わせた。

「まぁー、ちょい色々あってな…。とりあえず、今日は先に寝よう。何か疲れたねん。」

ふぅーっと大きなため息をつきながらタカは寝る支度を始めた。

「なんや気になるけど…まぁーお疲れさん。ノゥン、お前もしんどそうやなぁ!もう寝んか?」

シンは暗い表情のノゥンを心配して、ノゥンの分の毛布を用意してくれた。

「それじゃ、とりあえず明日って事で…おやすみぃ。」

タカが明かりを消した。三人は暗闇の中、静かにそれぞれの思いを巡らせていた。

タカはノゥンの全てを知って、正直な所動揺していた。ノゥンはトランスの中でも王族の子としての人外な魔力を持っている。…“人間ではない存在”だと言う事にどこか違和感を持ち始めていた。

シンは二人の帰りが余りに遅かった事に、ただならぬ事態があったのだろうと感じていた。しかし二人の疲れ切った暗い表情を見ると、何も問いただせなかったのである。

ノゥンは、胸の中で眠るスカーレットの暖かさを感じながら男の言葉を思い出していた。

(君の体に流れる血は王位継承者の血だ。)

(…もしかすると、君が次の王位継承者になるかもしれないのだ。)

ノゥンの頭の中はグチャグチャだった。