「わかった。とにかく、やってみないと分からない。…もし、その三つが揃えることができたら我の元へ来なさい。その先の方法を教えよう。」

タカはやっと安心した表情でノゥンに優しく言った。

「ノゥン、大丈夫や。オレらが出会ったことすら奇跡に近いんやから、きっとお前が人間になることもできる。」

ノゥンはただ黙って頷くだけだった。

「ノゥン…と言いましたね?私がお役に立つ事はできませんが、どうか気をしっかりと持って。きっと強く望みさえすれば願いは叶います…」

王女は優しくノゥンを慰めた。

「ノゥン…とりあえずこの事をシンに報告しよう?ここに来た目的は果たしたんやから…」

タカが帰るように促すがノゥンはただ黙って頷くだけだった。

そんなノゥンにローレンは掛ける言葉が見つからなかった。

三人がゆっくりと出口に向かおうとしたとき、男がノゥンを呼び止めた。

「トランスの少年!…君だけに話さなければならない話がもう一つだけあるのだ。」

男はノゥンを他の者とは別の場所に呼んだ。

「一つ知っていてほしい…。今、魔族の中では次の後継者が殺される事件が起きている。…王はそれを人間の仕業だと考えて、人間を滅亡させようとしているらしい。しかし、王自身ももうすぐ寿命が来る程の年だ。…少年よ。もしかすると、君が次の王位継承者になるかもしれないのだ。」

深刻な顔で男はノゥンに言った。

「…君が人間に戻りたいならば、早くしたほうがいい。その内魔族達が君をさらいに来るかもしれない…。」

その言葉に、ノゥンはさらにショックを受けたが、黙って頷いた。

ノゥンは、タカ達の元へ戻り出口に向かった。

途中、タカに何の話だったのかを聞かれたがノゥンは

「大したことじゃないよ。」

と無理矢理に笑顔を作りながら言った。




洞窟を出たノゥン達は、ノスリーへと歩き出した。

「オレらは出来るだけ早く帰りたいから、このままノスリーには寄らんつもりやけど、ローレン。お前は?」

タカが出来るだけ何事もなかったかのように聞く。

「私はこのままノスリーに戻り、王に姫の事を伝えます。」

ローレンも出来るだけ明るい声で言ったが、そのまま三人は黙ってしまった。