三人が声の方へ駆け寄ると、そこには倒れている男にすがりついて泣いている女の姿があった。

「ヴァイス!!お願い!しっかりして!目を開けて!…」

女は泣きながら男を抱き寄せる。

三人はただ立ち尽くしてその光景を見ていた。

そのうち、女がノゥン達に気が付いて、キッと睨みつけた。

「あなたたちが…この人をこんな目にしたの!?」

その震える声に言い返したのはローレンだった。

「あなたはノスリーの王女リリー様ですよね?私達はあなたを助けにここに…」

ローレンが全て言い終える前に王女が叫んだ。

「私は助けなどいりません!私は自分の意思で城を出て、愛するこの方の元へと参っただけ…ただ一緒にいることだけで幸せだったのに…」

王女の声は震えながらも、その瞳は怒りで満ちていた。

「しかし…貴方はさらわれたと…」

ローレンが歯切れ悪く言いかけたが、その王女の強いまなざしに口ごもってしまった。

「うっ…リリー…?大丈夫か?」

男はうめき声と共にゆっくりと起き上がった。

「あぁ!!ヴァイス!!!良かった…生きていたのね!」

王女はさらに大粒の涙を流す。

「一体…どうゆうことや!?」

状況の飲み込めないタカがノゥンに小声で聞いた。

「僕にも何が何だか…とりあえず、あの男の人をどうにかしないと…」

ノゥンは動けない男の横までくると手をかざして何かを祈り始めた。

すると、暖かな光が男の傷口に集りみるみる内に傷口が治っていった。

「お前!?その力はトランス!?」

男の言葉にノゥンがビクッとなった。

「何故それを…?」

ノゥンの言葉に、男は目を閉じて言った。

「この魔力の感覚…我々魔族の物ではない。しかし人間より遥かに超えた力だ…我が術もかからないはずだ。」

男が言い終えた後、王女はその言葉に驚きながらも涙を拭い

「トランスの少年…あなたを私達の理解者としてこれまでの話をします。」

そう言って男と深く頷きあった。