その露店は一人の老人が座っており、店には装飾品やガラクタのような物が雑に置かれていた。

「タカ、僕達が探しに来たのはそんなんじゃないだろ?」

ノゥンが呆れたように言うが、タカは色々な物を見たり、触ったりしている。

「少年よ。お前が探しているのはこれだろう?」

いきなり老人が話し掛けてきた。そして奥の箱から鳥かごのようなものを取り出した。

ノゥンが差し出されたかごをよく見ると中には淡い光を放つ小さなものが入っていた。

「これは…妖精じゃないか!?珍しい…話には聞いていたけど…」

ノゥンはその小さな妖精を見つめる。

妖精は赤い髪にオパール色の羽を生やし、見た目は人間の女の子のようだった。

「この子は飛ぶことができず、ただ周りを暖かくすることしかできない為に仲間達から嫌われてしまった哀れな子だ。しかし、お前さん達には十分だろう?大事にしてやってくれ。」

老人は優しく微笑んだ。

妖精は悲しそうな顔で老人を見つめていた。

「やったやん!ノゥン!これで山に登れるなぁー」

タカがいきなり立ち上がってノゥン達の間に割り込んだ。

「タカ…。でも妖精なんて…。」

ノゥンは困惑していた。

「大丈夫。このコはきっと役に立つ…お前さんと同じだ。それが運命。ここで出会ったことも、お前さんが町を出たことも…」

老人は半分独り言のように言った。

「あなたは…一体?」

ノゥンが不思議そうに尋ねるが、老人は聞いていない様子で妖精をかごの中からだした。

「さぁ、この子に名前を付けてやっておくれ。良い名前を。」

妖精は恥ずかしそうにノゥンとタカをチラッと見た。

「ん~…真っ赤な髪やから…レッドとかどない?」

タカは自信たっぷりに言ったが、妖精はプイと横を向いてしまった。

「タカ、それはちょっと安易過ぎない?女の子なんだし…同じ赤なら“紅”って意味のスカーレットは?」

ノゥンが言うと、妖精はニッコリと笑顔を浮かべ、さっきよりも強く光った。

「はははっ、どうやらそれが気に入ったらしい。残念だったな黒髪の少年よ。…さぁ、スカーレット…おいき。」

ノゥンが両手を差し出すと、妖精はトコトコと歩いてきて、ぺこりとおじぎした。