「まぁーそんなことよりローレン、何やこの町の暗さ。後、何でお前が警備隊にあんな言われ方されとったん?」

タカはふいにローレンに話し掛けた。

ローレンはまた顔を曇らせ、うつむいてしまった。

これにはタカもはぁ~っとため息をついた。

「お待たせいたしました、ココア、ベニエ、コーヒー2つでございます。」

店員がそれぞれの前に置いていく。

タカが待ってましたと言わんばかりに、ココアを飲んだ。

ノゥンもコーヒーを手に取りながら、ローレンにも薦める。

すると、ローレンがポツリポツリと呟くように話し始めた。

「この町が暗いのは、姫がさらわれたままだからなのです…。」

この言葉に今度はノゥンも問い掛けた。

「でも、姫は君が助けに行ったはずじゃ…。」

ローレンはまた涙を流しながら、話した。

「はい…確かに私は姫を助けるためにノスリーに来ました。…最初は町の人々も私を歓迎してくれたのですが…。」

ローレンは深く深呼吸し、

「私は、捕らえられた姫を目の前にして…逃げ出してしまったのです…。そして逃げ帰った私を…町の人は許してはくれませんでした…」

そう言い終えたローレンは大粒の涙を流した。

ノゥンはローレンをなだめながら、タカに言った。

「タカ…僕、ローレンを助けたい。」

タカはベニエを食べようとした手を止めた。

「ノゥン!オレらの目的は図書館やろ?…ゆうたら悪いけど、これはコイツの問題や。オレらが手ぇだすことやない。」

タカの鋭い言葉にノゥンも黙ったが、

「それでも…このままにはして置けない…」

と、ローレンを見ながら言った。

ノゥンには一つの思いがあった。自分があの暮らしを飛び出したいと思ったきっかけはローレンとの出会いだった。この若い青年の勇気が自分を動かしたのだと思っていた。だからこそ、こんな風に弱々しく泣いている姿など見たくなかったのである。

ノゥンの強い瞳に、タカも

「また人助けかよ…ほんまにオレの柄じゃないんやけどな。」

と、頭をボリボリかきながらしょうがないとでも言うように肩を落とした。