と言って、男はノゥンの手を握りしめた。

ノゥンは少しこの男を見つめながら、はっと気が付いた。

「まさか…ローレン?」

男はさらに涙を流しながら、

「覚えてて下さったんですか…!」

とノゥンに抱き付いた。

「何やねん!ノゥンの知り合いなんか?オレにも紹介してーや。」

少し間が空いたのでタカは、やっと話に入れた。

「あぁ、ごめん。この方は戦士で、僕が神官のときに参拝に来てくれた人なんだ。」

ノゥンは、ローレンの背中を優しく撫でながらタカに言った。

「ふぅーん?戦士ねぇ…戦士にしちゃあ泣きすぎちゃうん?」

とタカがからかうように言った。

確かに以前参拝に来たときよりも、自信と言うか気迫みたいな物が薄れているのを、ノゥンも感じていた。

「ローレン、君みたいな戦士が臆病者だって?ノスリーの姫を助けに行ったはずじゃあ…。」

ノゥンが優しく尋ねると、ローレンはさらに顔を歪めながら泣いた。

タカはまたやれやれといった感じで、

「とりあえず、どっか落ち着いて話せる場所に行こっ!外は寒くてかなわんわ。」

と、両腕をさすりながら近くにあったカフェへ入って行った。

ノゥンも泣きじゃくるローレンをなだめながら後をついて行った。

「カランカラン」

店に入ると、暖かな空気がブワッと広がった。

カウンターではコポコポとコーヒーを入れる音がする。

「ノゥン、こっちや!」

タカが奥に座っており、店員らしき人がメニューを聞いていた。

「オレ、ココアな!後、このベニエってやつ!ノゥンと…ローレンやった?何にする?」

タカは席に着いたノゥン達にバッとメニューを広げた。

「んーと、じゃあ僕はコーヒーで。」

「私も同じのを。」

店員がサラサラと書きながら注文を確認し、カウンターへと戻って行った。

タカは店員が行った後、喋り始めた。

「とりあえず、これまでの状況整理やな。まず、身分証が無くなった。多分これは…」

「あの主人の仕業だと思う。」

ノゥンも真剣な表情で言う。