「シン!それは…。」

タカが何かを言おうとしたが、ノゥンがスッと手を出して止めた。

「わかった。確かにタカ達は今まであれで賞金稼ぎをやってきたんだから、無いと困るよね。」

優しく微笑むノゥンにシンも安心した様子で、

「ありがとう…わかってくれて。」

そう言ってノゥンに手を差し出した。

ノゥンは手を握り返しながらも、頭の中では昨日の思いが浮かんでいた。

(トランスは人間の道具にしかならないのか?)

しかし、目の前で嬉しそうに笑っている二人を見て、何とかその言葉を振り払うのだった。




朝ご飯を食べ終えるとタカは鉄馬の所へ行った。

ノゥンがタカのもとへ行くと、ちょうど荷物を積み終わったらしく鉄馬にまたがっていた。

「うっし!準備OKや!いつでも行けるで。」

そう言って、早く行こうと言わんばかりに手招きする。

「おーぃ!ちょっと待て!」

シンが奥から何かを持って走ってきた。

「お前ら…地図も持たんと行く気か?しかもノスリーは北の国や。ここよりずっと寒い。そんな薄着でえぇわけないやろ!全く…タカ!お前はいっつも抜けてんねん!」

シンは文句を言いながらもせっせと二人に上着を着せ、地図を持たせる。

「何か、おかんみたいやな。」

タカはノゥンに笑いかける。

「タカ~!そんなことゆうとったらこれやらんぞ!」

シンはタカをにらみつけながら、二枚の小さな板を取り出した。

「何やこれ?」

タカがそれを受け取りながら聞く。

「それは身分証や。それがないと本を閲覧させてもらえへん。普通の人やったら国とかからもらえるけど、俺らみたいに身元がはっきりしてん奴は無理やねん。…やから、俺が作った。」

ニッと笑いながらノゥンにもカードを渡す。

「シンってこんなのも作れるんだね。」

ノゥンが感心した様子で言った。

「サンキュー!シン!…んじゃまぁー行って来るわ!」

タカがエンジンをかけ、ノゥンも慌てて飛び乗る。

「タカー!ノゥンー!気いつけてなー!」

シンは轟くエンジン音に負けないように叫んだ。

「任せとけ!…じゃ、行って来ます!」

タカとシンは拳を合わせ笑い合った。そして鉄馬は勢いよく家を飛び出した。