「ひかるの好きになった人、見てみたかったなぁ」
「な、何よ、その言い方」

沙羅はニヤニヤしながらひかるを見ている。

「だってもう一生見れなさそうだもーんっ」

そう言いながら沙羅は楽しそうだ。

「そんなことないわよ。今からだって理想の人が現れたら…」


…恋…するのかなぁ?


「ねぇ、ひかるの理想ってどんな人なの〜?」
「あたしの…理想?」
「あっ、いいねそれ♪聞いてみたいっ」
「あたしの…理想は……」

ひかるは言いながら言葉に詰まった。
理想…今までそんなこと考えたこともなかった。
一生懸命頭の中で“理想”を検索した。

「どうした、ひかる?」
「あっ?えっと…そうだな…。やっぱり優しい人…かな」

「え?それだけ?」
「ひかる…本当に恋したことあるの?」
「なっ…何よ?本当にあるってば!」
「だって、それじゃあ…」
「この教室にだっていっぱいいるじゃん!」

…確かに。
ひかるは自分で言っときながら納得してしまった。
いや、待てよ?
この学校にひかるに優しくしてくれる人って…?

「…いないよ」

ひかるはボソッと呟いた。
この学校でひかるに優しくしてくれる人は、どうにかひかるに気に入られて損害を被らないようにしたい人達…。
本当の意味で優しくしてくれる男子なんて…、ひかるは見たことがなかった。

そして…
本当に男としてかっこいい男の子もいなかった。