ゆっくりと黒板に名前を綴る彼の手先を
女子達はトロンとした目で見つめる。


杉原蒼


黒板には綺麗な字でそう書かれた。

「…杉原蒼(スギハラ ソウ)です。…よろしく」


愛想をふるわけでもなく、かといって敵意を表すわけでもなく
なんとも簡単な挨拶を終わらせた。

それでも女子達は、頬をピンクに染めて彼に見入っていた。



挨拶を終えた彼は、そんな女子達の反応にも気付かず、
先生の言葉も聞かずにさっさと壇上を降りてこちらに歩いてきた。


え、ほんとに席ここなの?

ひかるは整った顔を歪めて、自分の隣の空いている席を見た。



蒼は女子達の視線をものともせずにゆっくりとひかるの隣の席まで歩いてくると
座る前に1回止まってひかるを見た。

「な、何よ?」


ひかるは眉毛をピクピクさせながらも平静を保った。




そんなひかるを見て蒼はクスッと小さく笑うと

「…よろしくね」

と席に座りながら呟いた。