「ホームルーム始めるぞー」

チャイムが鳴って少ししてから、担任の西島先生が現れた。
女の子たちの目がさらに輝く。

「…なんだ、お前ら。そんなに目輝かせて。」
「もーっ先生、勿体ぶらないでよっ」
「なんだ、もう知ってるのか?」
「当たり前じゃーんっ」

黄色い声が飛ぶ。
先生は参ったなという顔をしてから、諦めたように話し出した。

「もう知ってるようだが、今日からみんなと勉強する仲間が増える。杉原、入れ」

お決まりのセリフに促されて、1人の男子生徒が教室に入ってきた。



その姿を見て女子たちは目をハートにさせて、頬を紅潮させる。


その一方で、ひかるは固まってしまった。
…あの人、さっきの人じゃん。
そう、ひかるのクラスに転入してきたのは、ひかるがさっき階段で出会った男子だった。



「ちょっと、ひかる!彼、結構かっこよくない?」

何も知らない沙羅は興奮気味にひかるに話し掛ける。

その声が耳に入ったのか、壇上でボーッとしていた彼がこちらに目をやった。


「…あ、階段の」

…ギクッ。

「ん、なんだ?杉原は鳴海と知り合いか?」
「…へぇ、鳴海って言うんだ」

先生は何も知らずに彼に話し掛けているが、ひかるの頭の中はパニック。
いくらひかるでも、みんなが彼にどんな印象を抱いたか、くらいわかる。

…空気読めよ、先生。

ひかるは心の中で小さく叫んだ。