「流依」

「ん?」

「手、引かなくても平気よ?」


 わたしは胸の苦しさを和らげるため、流依にそう言った。


 実際、引かれなくてもついてはいける。


 でも流依は離してはくれなかった。



 前を向いたまま「駄目だ」と告げられる。

「お前に何かあったら先輩達皆泣くかも知れないからな」

 と一度言葉を切った流依は歩みを止めずに顔だけわたしのほうに向けた。


「お前、男泣かせだし」


 いたずら心のある子供っぽい目をしながら、流依はまたわたしをからかう。

 当然、わたしは拗ねた。