「おいおい小都子~。だめだろ? 和泣かせちゃ~」

「え?」

「最近俺達がお前泣かせてばっかだったけど、最後の最後でお前が泣かせちゃうんだもんな~」

 そう言って優姫先輩はわたし達に近づいてくる。

 すぐ近くで立ち止まって、わたしの眉間の辺りを人差し指で軽く押した。


「この、男泣かせが」

「は?」


 一瞬何を言われたのか理解できなくて、わたしは呆けた顔のまま聞き返した。

 でもそれに答えが返ることは無く、代わりに耳元でさっきとは違う押し殺した声が聞こえてきた。


「っくっ……ふっ、ふふっ」

「わ、和子先輩……?」


 熱い体と、小刻みに震える肩は同じ。

 でも、わたしの肩に落ちてきていた熱い雫はもう降りてきていない。