「これが、最初で最後ですから……。許してください」

「え……?」


 どういうことなのか良く分からず、一文字で聞き返す。


 最初で最後の……キス?


「最後の思い出にさせてください。もうこれで、貴方のことは諦めますから……」

 そうして、寿先輩は悲しそうに微笑んだ。


「ずっと、考えていたんです。昼間から……。もう、貴方の心を私に向けることは出来ないのかって。いくつもの可能性を考えました」

 頬に触れていた手をゆっくり離し、「でも」と続けた。


「いくつもの可能性を考えても、貴方の悲しそうな顔しか浮かんでこないんです。私は、貴方に笑っていて欲しいから……。だから、諦めることに決めました」

 そうして、寿先輩は一歩わたしから離れた。