でも、寿先輩の手が頬に触れてくる。

 さっき乗っていた蛍はもう逃げたようで、その手の上にはいなかった。



「小都子さん。顔を上げてください」

 言われて少し躊躇ったけど、頬に触れる手に促され結局は上げてしまう。


 そして真剣な目とかち合ったと思ったら、次の瞬間には唇がわたしのそれに触れていた。


 触れて、わたしの驚きが冷めやらぬうちに離される。


 突然の不意打ちになんて言葉を口にすればいいのか分からず、わたしは金魚のように口をパクパクさせた。


 そんなわたしに、寿先輩はいたずらっ子のように微笑んだ。

「フフ……。すみませんね」

 寿先輩のそんな顔、初めて見る。
 茶目っ気たっぷりな、楽しそうな顔……。


 その表情にも驚いていると、寿先輩はそのまま言葉を続けた。