「あの、寿先輩? こんな所で何を――?」

 言葉は、途中で止まる。


 山の中。

 街灯もなく、明かりなんて月明かりがせいぜいの場所。



 なのにその小川には、小さな明かりが無数に存在していた。


 優しく点滅する光。

 その光が宙を舞う光景はとても幻想的なもので、わたしはしばらくの間言葉を忘れて見とれていた……。





「綺麗でしょう? さっき部屋から見えたので、是非貴方に見て欲しくて」

 十分ほど無言で光景を楽しんでから、寿先輩がさり気なく話し出した。


「これ……蛍ですか?」

 視線は数多(あまた)あるほのかな光たちに向けたまま、聞く。