「あの、それじゃあ余計――」

 分からないんですけど、と続けようとしたとき、ダイニングのドアが開き寿先輩が食べ終わった食器をカチャカチャと鳴らしながら入ってきた。


 わたしは思わず言葉を中断して寿先輩を見る。


「ああ、間に合いましたね。これだけ後から洗うことになるのも面倒ですから」

 わたしが変わらず複雑な気持ちで見つめる中、寿先輩は普段と変わりない笑顔で食器を洗い場に持っていく。


 洗い場にいた僅かに戸惑っている流依を気にすることなく、寿先輩は自分と和子先輩の分の食器を洗い始めた。



 その姿を見ながら、わたしは何かを言わなければならない気持ちになる。

 でも何を言いたいのか。
 何を言えばいいのか。

 分からなくて言葉が出てこない。


 口を開いては閉じ、を何度も繰り返していた。