『…今日、お前に電話を入れたのはその件でだ。』


 「どういうことだ?」


 『風の噂で聞いたんだけど、お前、アメリカに行くんだって?』


 「…あ、あぁ。大学に提出した論文を教授が勝手にアメリカの大学に持って行ったらしくて、オファーが来てる。」


 『さすがだな。高校の時からつるんでバカやってたけど、まさかお前がアメリカなんて
考えられないよ。』


 「ンなの、俺だって同じだ。…でも、いい機会だとは思っている。もうそろそろ俺は柚華を忘れなきゃいけないんだ。」


 …4年前、柚華は俺のかけがえのない存在だった。


 いまだに忘れられない俺は、未練がましい男なんだろうか?


 『…4年たっても忘れられないか。まぁ、確かに柚華はそれだけの女だよ。』


 「…じゃあ、返せ。」


 『ハハハ。…誰が渡すか。』


 今は、こいつの大切な存在…。


 4年前、傷ついた柚華を救ったのは、彼氏の俺ではなく、親友の祐一だったんだ。