「わん??」
若松が後ろを振り返ると、マーブル色のフサフサとした毛を揺らしながら、垂れ耳の大型犬が、しきりに
カヤに吠えていた。
あまりの大きさにカヤは戸惑っている。
「なんだ、モモ。お前だったのか。まだ生きてたんだな〜!」

若松の表情が緩む。
その様子を見たカヤが、
「若松さん!!このワンちゃんどうにかしてください!!中に入れませ〜ん」
と、半ば半べそをかきながら若松に訴えてきた。

…むしろ入らなくていいかもしれない…

頭に浮かんだ腹黒い考えを首を振って振り払うと、甲高い音で口笛を吹いた。
すると、モモはピンと耳を上げ、パッと口を閉じて辺りを見渡すと、発信源を探しはじめた。
そして、それが若松と分かると尻尾を目一杯振って彼のもとに駆け出した。


―って、おぃ…。ちょっと勢い良すぎじゃ…

考える間もなく、モモは懐目がけてダイビング!!

案の定、それを押さえることができなかった若松は、派手に引っ繰り返りモモの下敷きになってしまった…。