「ご苦労…。」
ワインを一口飲むと、あいてる方の手で書簡を受け取った。
それを渡すと、使用人は軽く会釈をして部屋から退散していった。
男は封筒に包まれた書簡をまじまじと見つめた。
「宛名は…書いてないな?誰だ?」
男はまた一口ワインを口に含むと、ノリの付いた封をナイフで切り裂いた。
そして中から、折り畳まれた古びた紙を取り出した。
グラスを片手に持ちながら、器用に紙を広げた。
「え〜…何なに?『オマエは覚えているか』?………!?」
グラスが彼の手からこぼれ落ち、地面に叩きつけられ耳障りな甲高い破壊音が部屋一面に響いた。
男の顔から一気に血の気が引いた。
手紙を持つ手が小刻みに震える。
とうとう手紙すらも持てなくなる程手に力が入らなくなり、じゅうたんの上に新聞の切り抜き文字で綴られた手紙がゆっくりと舞い降りた。