「ところで若松さんは、どちらまで行かれるんですか?」
カヤは少し離れた座席に座った。
どうやら、俺に気を効かせてくれたようだ。
お陰で安心して話せる。
「ここから少し離れた山奥にあるペンションに…ね。最近開業したそうだが。」
元通りに座り直した若松が落ち着きを放って話しだした。
「それって…“紅葉館”って名前ですか?」
ふいをついた答えに若松は目を丸くした。

…嫌な予感がする…

若松の額に再び汗が沸き上がる。

いやぃや…、まさか…そんな偶然はないだろう…。
さすがに、もうこのお嬢さんと一緒にいるのは耐えられねぇぞ…

勇気を振り絞って声を発した。
「あぁ…そんな、名前だったかな…?」
カヤの顔が段々と明るくなる。
まるで光を放つ電球のように…

お…おいおぃ…止めろッ!!

「私も“紅葉館”に行くんですッ!!」