「海だあぁ」

車から降りると、わたしは大きな声で叫んだ

「おおっ、海だ、海だあぁ」

わたしは目を大きく開いて、海を見た

潮を匂いがする

白いワンピースが、風に揺れる

髪もふわりと浮いた

「元気な方ですね」

有栖川が苦笑している

「あ、だって海だろ
本物の海だぁ」

わたしは両手を広げて、深呼吸をした

「乙葉は、あまり遠出をしたことがないんだ」

元が車にロックをかけると、有栖川に説明をする

「そうなんですか」

「ええ、彼女の父がなかなか許可を出してくれないもので」

元が苦笑した

「今日のは大丈夫なんですか?」

「ええ、ちゃんと連絡しました」