甘い香りに誘われるがまま、右も左もわからないまま進んでいくと――突然白い風景は色づく。


それはまるで魔法のように。



「霧が晴れたの?……建物?ずいぶん古い建物ね……歴史的建築物か何か?」


鈍色の巨大な鳥居の奥には和の建築物がある。お社にしては立派な――玻璃色の、塔のような天に近い建物。




こんな建物、私の国にはないよね……?




一人ぽかんと立ち尽くしていたときだった、聞き覚えのある声がしたのは。