「次は○○~」
裕太の降りる駅が近づいてきた。
寝起きが悪いのは毎日のように起こしてるから知ってる。
「裕、次だよ。」
「んっ……?」
「起きて。降りそびれたら遅刻になるよ」
「……!? ここどこ?」
「裕が降りる駅。」
「やばっ」
「降りなきゃヤバいね」
「違う、彼女いたらキレられる。」
そっちの心配なんだ。
そりゃね、彼女が今の状況を見たら怒るだろうね。
裕太と地元同じだから最寄り駅も一緒だろうし、この時間帯なら帰り道って可能性もあるもん。
だからって、ちょっとそれはない。
私、ここまで一緒に来たんじゃん。
降りる駅なんてとっくに過ぎて、それでも裕太を寝かしてあげたいから辛い体勢でも我慢して来たのに、それってあんまりじゃない?
「じゃあ他人のフリしとく」
席から離れて、駅につく前に扉に向かう。
内心はグチャグチャだけど、あくまで冷静を装う。
下唇が痛いぐらい唇を噛む。
さっきまでの裕太とカップルに間違われて嬉しかった気持ちは、どっかにぶっ飛んでった。
今あるのは、悔しさと憎らしさだけ。