「ごめん、お待たせ。」

「じゃあ帰ろっか。」

「うん。」

いつも通り笑ってるつもりだけど、顔が引き攣ってるのが自分でも分かっちゃう。
きっと目が笑えてない。不自然な笑顔になってる。

「美由、どうしたん? 俺でよかったら話聞くけど。」

「裕に言っても解決しないことだから」

「……そっか。」

今の言い方、最低。可愛くない。
でも裕太に言ったところでどうしようもないし、困らせるだけだって分かってる。
フラれるのなんて分かってる。
でも今まで意識しないで略奪してきたのあるから、今回もできるかななんて思ってる自分がいる。
友達の彼氏が私を好きになって別れるの実は結構ある。
高校のときも、それで揉めたことあるんだよね。

だからどっかで裕太を奪えるんじゃないかって思ってる汚い自分がいる。

実は略奪って彼女といるより楽しいって思わせたら結構簡単にできるんだよ。
今まで全部それだったもん。
意図的にはしたことないけどね。
だから今、仲良くしてて裕太が彼女といるより私といるほうが楽しいって思ってくれたら、私は彼女から裕太を奪える。
あくまで今までのパターンでいくとね。
だけど今の私は楽しいなんて思わせれてない。

「ごめん。八つ当たりした。」

「いいよ。」

やっぱり裕太の優しいところが好き。
八つ当たりしたのに笑って許してくれるとこが、余計に好きになる。
なんで彼女がいるんだろう。
ううん、私以外にだって優しいんだからいて当たり前だよね。
同じように優しくされて好きになっちゃったんだ彼女も。