わたしには『医学』の知識はほとんど無くて。


ただ、ドクターやナースが一生懸命患者さんのお世話をしているのを側で見て、


『ドクターやナースのやっていることを無駄にしてはいけない』


そう思って働いています。


わたしのやっていることは確かに『仕事』で


だからこそ


『技術』も『知識』も必要で……


だけど。


『人間同士の係わり』


それが大切だと、感じられる仕事です。


技術も知識もまるっきり関係のないところで


『信頼』だったり
『安心』だったり


『わかり合えたり』


そんな『奇跡』も起こる。


 


……


……


永花、語りました(恥)。


すみません……。


お手数ですが、永花が語り出したら、誰かとめてくださいね!



このお話を書く時、


ありのままの風景をありのままに伝えたいと、本当は思ってたんです。


『わたしの考えや気持ち』は抜きにして……と固く誓ったはずなのに……!!


わたし、ダメですね〜。


お二人を前にしてテンション上がってます。


あれもこれも……と言いたくて、仕方ない。


ロボさんと
メガネさんの


『閉鎖病棟』がとても楽しくて素敵だったから。


嬉しかったんです。



言い訳……?


 


じゃあそろそろ、ひとつ下の5階に行きましょう!


6階……また来ますよ。


今日は13時に『入院予定』が入っていますから。


入院手続き、せっかくだから見て行ってくださいね!


ホッカホカのお話をしますからね。


んじゃ、階段です。


ひとつ降りたら食堂がありますからね。


食堂の脇にデイケア室の扉があります。


反対側には『お風呂場』。


さ、階段はこっちですよ。


カギを開けまーす。




 


……さあ、5階。すぐ目の前は食堂。


入院患者さんたちはここで食事をします。


配膳のカウンターの奥は栄養士室と職員食堂が……


ん?


「……オレは、やるぞー。絶対、やってやる……」


……んン?


あれは……春川さん?


男性入院患者さん、ですね。


……あぁ、男性の『入浴』が終わったんですね。


ちなみに、『お風呂』は週に3回。


看護師さんとヘルパーさんが介助をします。


……って!


「春川さん、なんでここに居るんですか?入浴終わったら部屋に帰ってくださいね」

 


「いいんだ。オレ、やるから」


「早く戻らないと、カギ掛かってしまいますよ」


えーとですね。


『お風呂』や『食事』の時間は、5階に続くカギを開けますので、大部屋にいる男性、女性病棟の入院患者さんは5階への出入りは自由になります。


もう11時ですので、男性患者さんの次、女性患者さんが『入浴』します。


男性が『先』です。


やはり女性の方が入浴時間が長いですから。


それと。


わたしどものこの病院は女性患者さんの方が、人数多いんです。





 


そんな訳で。


そろそろ5階〜6階への階段のドアも開きますよ。


……って。


「春川さん!そちらは女性病棟!春川さんは4階ですから、階段は降りましょう!」


「あ、そうだっけ?」
 ※そう言ってお風呂場へ向かって歩き出す



「春川さん。まだ女性は入浴していないですよ。『覗き』に行っても何もないですよ〜」


「女、いつ入る?」


「女性のお風呂を覗いたらいけません!さ、下に戻りましょう」


「オレはやってやる」


「ダ・メ・で・す!!」



 


「……ダメ?」
 ※泣きそうになる


「泣いてもダメです」


「本当に?」


「戻りましょう」


「……わかった」
 ※しょんぼりする


「春川さん、今、看護師さん呼びますから、一緒に下に行ってくださいね」




ピンポーン※4階ナースステーションへのベル
永花『5階食堂に春川一郎さんがいます。軽い躁状態、お迎えお願いします』


「春川さん、看護師さんが来るまで一緒に待ってましょうね」


「フーッ」
 ※溜め息


「春川さん、どのくらいココにいたんですか?」




 


「2時間」
 ※ニコニコする


「えー?男性のお風呂は10時からですよ?今11時だから、もっと少ないんじゃないですか〜?」


「そう?」
 ※ニコニコする


「確か先週は『10分』待ってたんですよね」


「そうだった?」
 ※ニコニコする


「お風呂から上がったら、すぐ部屋に戻りましょうね」


「先生に言わない?」


「もう『覗きに来ない』って、約束出来ますか?」


「約束出来ます」
 ※ニコニコする


「本当?」
 ※永花もニコニコする



 


「出来ないかも」
 ※照れ笑い


「どうすれば『約束出来る』ようになれるか、先生とお話してみましょうね」
 

「無理だよ、オレ、怒られるよ」


「女性のお風呂を『覗くこと』は怒られちゃうことなんですよ」


「フーッ」
 ※溜め息


「春川さん怒られるの嫌でしょう?女性も覗かれるのは嫌なんですよ」


「フーッ」
 ※溜め息


「主治医の先生と『覗かない』って約束、もう一度しましょうね」


「オレ、女が好きなんだよ」