「共有結合が・・・水素結合・・・ぶつぶつ」

「ちょっと陽菜、朝から何一人でブツブツ言ってるのよ」

「あ、怜奈おはよう。」

「おはよう。で?何をブツブツ言ってるの?」

「化学。どうにもこうにも理解できない。実感できないのよね。そもそも何このモデル図。本当に原子や分子はこんな色してる訳ないじゃない。それにどうやってこの形だって証明できるわけ?」

「相変わらず、屁理屈多いわね陽菜は。」

「昨日お母さんに口達者って言われた。」

「でも、偉いじゃない?陽菜ちゃんと勉強してるんでしょ?」

「だって、来週の青春物語見れなくなったら嫌!お母さん成績落ちたらテレビ禁止にするとか言うのよ・・・」

「本当にドラマ好きよね。陽菜って。」

「私の青春賭けてるから!」

「重傷ね。あ、授業始るわ!一時間目から化学ね・・・頑張って!」





・・・キーンコーンカーンコーン


『席に着けー!』





授業が始まった。
苦手な化学。

怜奈は私の二個前の席に着いた。
相変わらずの黒髪の長い髪を揺らして。

凄く良い香りがする。
きっと怜奈の残り香だと思う。

高校生になって初めてできた友達は怜奈。
はっきり言って美人で秀才、その言葉が似合う。
中間試験の番数なんて片手に入る数。



それにしても教室が蒸し暑い!
クーラーがついているとはいえ、この狭い部屋にこれだけの人数が密集しているから、クーラーが効きだすのにも時間がかかるのは分かるんだけど・・・

私は授業を聞くのもそこそこに内職をすることにした。
とはいっても内容は化学。
応用問題は捨てたとして、基本問題ぐらい解いて、点数を稼ぐことが今の私の目標であり、一番現実的なテスト対策になる。