私は杏奈を連れて部屋に行き、荷造りを始めた。




「お姉ちゃんは、離婚に賛成なの?」

「・・・反対ではないかな・・・。」

「何で?お姉ちゃん杏奈のこと嫌いなの?バラバラになってもいいの?」

「そうじゃない。そんなわけないじゃん。」

「じゃ、なんでよ・・・。」

「このまま離婚しなくても私たちは幸せじゃない。一番良いのはお父さんだけが出ていくことだと思う。」

「ならお姉ちゃん、お母さんたち説得しようよ!」

「駄目だよ。杏奈。あんたは頭が良いんだから。お母さんたちが言ってるの、正しいよ。杏奈はもっと勉強して、良い高校に入りな。」

「そんなの全然嬉しくない。お母さんは杏奈のこと邪魔なの?」

「そんなわけ絶対ない。けど、今は仕方ないんだよ。」

「嫌。お父さんだけにはついて行きたくない。お母さんを裏切ったんだよ?お姉ちゃんなら良かったのに。」

「・・・杏奈。ごめん、辛いと思うよ。けれど、お母さんは働いてない。だから私は今まで通り高校行けるかもわからない。杏奈は賢いからその可能性つぶしたくないんだろうね。私はバイトか何か始めないといけないだろうし。」

「・・・ぅん。」

「杏奈、今は我慢してお父さんについて行って、ちゃんと勉強しな?私、早く独立できるよう頑張るから。そしたら杏奈のこと迎えに行く。」

「本当!?!」

「うん。約束する。あと二年半だけ。ううん、杏奈が高校入学するまで・・・一年半頑張って?私も、それまでに頑張ってみるから。」

「分った。私、待ってる。約束よ?」

「うん。」



気休めだと思った。
こんなに社会が甘くないことだって分ってる。

けれど、私たちはこんな約束でも全てだった。