「いつから・・・いつからバラバラになるの?杏奈にはまだ伝えてないんでしょ?」

「これから杏奈にも伝える。明日には父さんは帰る。杏奈も一緒にだ。」

「ちょっと、急過ぎるよ!待って・・・理解できない!!!ねぇ、どうして?分からないよ!どうして?」

「父さんは随分前から母さんに言っていたよ。しかし、母さんがお前たちに話せないでいるから、こうして帰ってきた。」

「・・・っ!お父さんあんまりにも薄情じゃない!?言えないの当り前じゃない!」

「陽菜、お母さんも悪いの。お父さんを一人働きに出してしまったんだもの・・・。」

「お母さん!変だよ!お父さんもお母さんも変だよ!」


私は必死に考えようとしたけれど、頭が全然ついてこなかった。

口を開いては閉じ、開いては閉じ、全然整理できない事実を飲み込めないでいた。

ただただ時間だけが過ぎ、秒針だけが一定のリズムを刻んでいる。

お父さんもお母さんも、もう自分から口を開こうとはしなかった。










「あのさ・・・」

「何だ。」

「杏奈は学校は転校するの?」

「そうなる。」

「荷物は?」

「今から急いで必要なものだけ荷造りして送る。残りは向こうでそろえる。」

「そう・・・。」



私はすっかり考え疲れてしまった。
口をやっと開いてみたけど、どうでも良いことを訪ねては薄い返事をした。









・・・ン、タン、タン、タンタンタン





階段を降りてくる足音が聞こえる。










杏奈だ。