ソファーに座ると空気が急に張りつめた。
お父さんは何処とつかない場所を見つめている。
お母さんはうつむいている。
そしてお静かに口をあけた。



「話があるの。」


お母さんはうつむいたまま言う。
そういえば、さっき玄関でも私の顔を見ていなかった。



「・・・・何。」

「お母さんとお父さんね、離婚することに決めたの。」

「は?」

「そういうことだ。」

「どういうことよ?全然理解できないんだけど。」




お父さんは私の目をチラリと見たがすぐにそらして続けた。




「単身赴任先に結婚したいと思っている人がいる。」

「は?・・・何よ・・・それ。」

「お前たちにはすまないと思っている。」

「すまないって何?・・ふ、不倫してたってこと?」

「・・・随分前から母さんと話はしていたんだが、お前たちのこともあった。」

「ちょっと、前からっていつよ!?お母さん?」

「・・・ごめんね陽菜・・・。」

「ちょっと!何よ!私たちのせいなの?それで離婚の話があやふやだったってこと?だったら、離婚しないでよ!何で今さら離婚するのよ!」

「・・・決めたことなんだ。分ってくれ、陽菜。」

「分らない!嫌嫌嫌!」

「陽菜・・・、困らせないで?もう母さんたち決めたのよ・・・。」

「困らせてるのはどっちよ!?私は?杏奈は?どうする気?」

「どちらかは父さんが引き取りたいと思っている。」

「どちらかって・・・私たちまで引き裂くってこと?」

「・・・金銭的な理由からだ。分かるだろう?」

「そんなのそっちの都合でしょ?」

「父さんは杏奈を引き取るつもりだ。陽菜は母さんを支えてあげてくれ。」

「何でそんなに無責任になれるの?ちょっと待ってよ!!!!・・・これ本当なの?」

「・・・・本当よ。」



お父さんもお母さんもすごく冷静に話していて、私だけが声を荒げていた。