「・・・ツクのよ。」

「・・・・・・うなよ。友・・ん・ろ?」

「でも・・・のよ・。」





誰かと誰かが会話している。




どうやら会話はこの曲がり角の先から聞こえてくるらしい。

私は顔を出さずに壁のぎりぎりまで近寄って耳を澄ませることにした。
盗み聞きするつもりはなかったのだが、その雰囲気が私をそうさせた。



「・・もいつも、私と同等って思ってるんだから。」

「友達は同等なものだろ?」

「何よ!ユウはそうやって陽菜のことかばうわけ?」


まぎれもなく聞こえてきたのは怜奈の声で、その声ははっきりと私の名前を呼んでいた。

私の首筋を汗が流れる。
酷い吐き気がした気がした。

この汗は暑くて流れてるのか・・・冷やせなのか・・・。
自分でも判別できないほどに私は緊張感でどうにかなってしまいそうだ。



「そうじゃなくって、俺、怜奈と付き合って、そのせいで皆から嫌われて・・・それで・・・」

「嫌われた?私がいつ嫌われたっていうの?あんなレベルの低い人達と同じ立場にしないでよ。あたしから離れたの?知ってるでしょ?」

「けど、俺、自分のせいで怜奈が周りから距離置くようになったんじゃないかって思ってて・・・、だから怜奈に友達がいるって知って嬉しかったから・・・」



どうやら、会話してるのは怜奈の彼氏さんらしい。
というより、怜奈に彼氏がいることなんて知らなかった。
それにしても・・・、男の人の声、聞いたことある。

嘘だ。嘘だ。嘘だ。
自分の中で良いほうへ良いほうへ話を転換しようと頭を回転させる。

けれど、聞こえてくるのは冷たい現実だけで・・・。




「だから優しくしたわけ?ふふふ。あの子馬鹿だから全部話してくれたわユウのこと。私が怒らないとでも思った?」

「・・・ごめん。俺、約束したのにな・・・。」

「あれだけ言ったのに。私にはユウだけなの!どうして私の友達に近付くの?」

「だって、怜奈の友達だと思ったら、酷くできなくて・・・」

「陽菜には話してないわよ!私に彼氏がいることも、その彼氏がサッカー部の7番なことも!」




「・・・っ!」

私はその言葉を聞いたとたん動けなくなった。