「返却お願いします。」


やっぱり7番はいなかった。
ちょっと期待してたのに。

返却口で本を受け取っているのは図書委員長の生徒だった。
確かこの前、集会で何かしゃべっていたから見覚えがあった。

あーあぁ。
怜奈の用事ってどれくらいかかるのかな。
結構すぐに返却できたから、ちょっと遠回りして教室に戻ろうかな。








外に出ると、気持ちのいい快晴で、まさに散歩日和だった。

けれど、梅雨を終えたこの時期は少し蒸し暑い。


「ん~、天気も良いし、中庭でも通って教室帰ろうかな~」


中庭では生徒たちがテストからの解放感からか、おしゃべりに花をさかせている・・・訳ではなく、人っ子一人いなかった。

テストが終わったからさっさと学校から帰り、遊ぶまたは部活に行くのだろう。

深呼吸をすると太陽の光を浴びると共に、午後のなんとも言えない空気が体内に入ってきた。

そろそろ怜奈も戻ってくるころではないかと思い、教室の棟に足を進めていた時、視界の片隅に人影を見た。




「・・・・怜奈?」



髪型は怜奈にそっくりだけれど・・・、先生に用事だからてっきり職員室に向かったと思っていた。

しかし、怜奈に似たその人影は私に気づくわけでもなく裏庭に続く道を歩いて行った。


ついて行こうか・・・、用事が終わったならきっと怜奈は教室に帰ってくる・・・。
その時に聞けば解決できるんじゃないか。
そもそも見た目が似ていたけれど、怜奈とは限らない。





でも・・・。


なんだろう。
ひどく胸騒ぎがする。




行けば何か分かるかもしれない。



ふとそんなことが私の頭をよぎった。


私はそのまま足を裏庭へと続く道へ進めさせた。