「ゴメン、帰る」
人だかりから抜け出して、
ひたすら走った。
「栖羽ちゃん!」
ふわり、
暖かく包まれた。
「....かっちゃん..」
....かっちゃん...
「...泣いてもいい?」
「...うん」
「...思いっきり泣いてもいい?」
「...いいよ。
思いっきり、泣いていいよ」
...かっちゃん...
かっちゃんをぎゅっとして、
思いっきり泣いた。
なんで涙が出てくるんだろう...
どうして悲しいんだろう...
陸戸がほかの女の子と一緒に居るから?
関係ないと言われたから?
それとも、
自分がつりあわないって気づいて、
悲しくなったから?
...可能性なんてないって、
最初から分かってたと思う。
ただ、どんどん惹かれていって、
どんどん好きになっていって、
抜けられなくなったんだと思う。
かっこよくて、
勉強も出来て、
運動も出来る
お金持ちの坊ちゃんが、
こんな貧乏で、
馬鹿で、
アホなあたしを好きなってくれる訳、
...ないじゃん。
王子様には、
素敵なお姫様が一番似合うから...。