「カオル、ごめんね」



ようやく言えた“ごめん”は

自分でも驚くほど素直にだった。




「何がだよっ。何の話?」


わざとなのか、それとも本気なのか

カオルは首を捻らせた。




「…ううん、何にもない。
ごめんね、ありがとう」


「…ん」


ふっ、と下を向いて笑う。


「明日はリュウヤが見送りに来ると思うから。
あたしは明日は行かないからね」


「え?」



行ったらきっと、泣いちゃうから。
最後くらい、笑顔でお別れしたいじゃない。




「…わかった」



ゆっくりと、カオルが背を向ける。

いっつも見ていたはずなのに、今日は別人みたいにカオルが大きく見えるや。