「やっぱ。学校行ったら“ここ”に来たくなるんだよなぁ」
学校を後にしたあたし達は、同じように何も言わずに“ここ”に辿り着いた。
ザァ…っと木々が鳴くように揺れる。
放課後、毎日のようにこのグランドに集まって野球した。
キャッチボールしてると、何故か自然に相手の気持ちがわかってきて。
馬鹿な話も、悩みも、色んな話をした。
「…キャッチボール、したい」
そう呟いたあたしに、カオルは「ふっ」と笑った。
「言うと思ったよ」
そう言うと、カオルは何かをこっちに向かって投げた。
あたしはそれを反射的にキャッチした。
「ボール…。どうしたの?」
それは野球のボールだった。
「さっきそこに転がってた。
きっとお前キャッチボールやりたいって言うと思ってたから…」