気づけば空は暗闇になって、星が顔を出していた。
結局何も出来ないまま帰ってきてしまった弱いあたし。
リビングからはお父さんとお母さんの話声が聞こえてくる。
“チヒロ!”
不意に頭の中にカオルの声が響く。
そういえば、初めて名前を呼んでもらった時…めちゃくちゃ嬉しかったっけ。
カオルとの思い出が、次々に蘇ってくる。
“はぁ?野球?俺ほとんどやったことねぇよ”
野球をほとんど知らないカオルに無理やり野球やらせたっけ。
始まりは何てことなかったのにね。
あたしがグランドの野球部を見て、野球したいって言ったら
じゃあ3人でやろうぜってリュウヤが言い出して。
まさか毎日の日課になるなんて思ってもみなかったもんな。