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絵莉衣、お前また彼氏と別れたんだってな。人伝いに聞いたのは初めてだったから驚いたよ。でも、そうなるように仕向けたのは俺。俺が自分で絵莉衣から離れたんだ。だから、仕方ないよな。
絵莉衣を俺が慰められないって思うとなんか悔しいけど、我慢するよ。

「司衣」
「んぁ?」
「なんだ、その顔。タマシイ抜けてんぞ」

俺のベッドに寝転ぶ唐沢が話しかけてくる。一番仲の良いダチだ。絵莉衣が別れた、と聞いたのも唐沢からだった。

「そんなに、北沢が大事なら離れなきゃ良いのに」
「なに言って」
「大事なんだろ、彼女が。好きなんだろ。嫉妬、してんだろ」
「なにが言いたい」

ベッドから起き上がり俺の隣にくる唐沢。俺は唐沢を睨み見る。
唐沢の言ってる事は的を射ていた。だからこそ、イラつく。そんなの、俺が一番わかってる。

「わかってないよ、司衣も北沢も。自分の気持ちにも、お互いがどれだけ大切な存在なのかも全くわかってない」
「は?」
「おかしいだろ。なんで互いを好いてるのに、それを伝えない?」
「俺は伝えた!でも、伝わらなかったんだよ」

唐沢の胸倉を掴み怒鳴りつける。
情けない。涙が流れた。俺は、絵莉衣が好きで、愛していて。でも絵莉衣は違う。絵莉衣は“幼なじみの俺”が、好きなんだ。男の俺じゃなく、幼なじみの俺が。

「司衣…」
「ごめん、唐沢。八つ当たりして」
「いや、俺こそごめん」

俺は唐沢の胸元に顔をうずめ声を上げ泣く。唐沢はそんな俺の頭を優しく撫でてくれていた。




なあ絵莉衣。
お前が好きすぎて辛くて苦しいんだ。