◇◆◇

いたたまれなくなって教室から走って出る。唐沢はそんな俺をどんな顔で見ていたのだろう。

「しぃ!待って!」

待つかよ。あんな形で絵莉衣にばれるなんて。笑って「なんだこれ」って言えば良いモノを俺は焦って唐沢を怒鳴りつけた。

「本当の事、だろ?」

冷静にそう言って笑った唐沢。
俺は絵莉衣を振り切る為必死に走る。

「しぃっ!…司衣!」

初めて名前を呼ばれた。思わず立ち止まってしまう。

「司衣、私」
「絵莉衣黙って」
「嫌だ!黙らない。司衣、私司衣が好き」

振り返り絵莉衣を見る。真剣な顔。思わず笑みがこぼれた。

「っハハハ!なに言ってんの?絵莉衣は俺なんか好きじゃないだろ。絵莉衣は幼なじみの俺、が好きなんだから」
「違う」

なにが違う?今まで何度も好きだと言われた。でもそれは恋人になりたい好きじゃなくて幼なじみとしての好き。

「司衣が好きなの」

今更なにを言ってるの。

「司衣が…好き」
「幼なじみとしてだろ」
「違う違うっ!私は、司衣が好き。愛して」
「待って。絵莉衣よく考えて。きっと絵莉衣は俺が居なくなって寂しいだけなんだよ。幼なじみが居なくなって、寂しいだけなんだ」





そう自分に言い聞かせた。これ以上、期待をしないように。