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いたたまれなくなって教室から走って出る。唐沢はそんな俺をどんな顔で見ていたのだろう。
「しぃ!待って!」
待つかよ。あんな形で絵莉衣にばれるなんて。笑って「なんだこれ」って言えば良いモノを俺は焦って唐沢を怒鳴りつけた。
「本当の事、だろ?」
冷静にそう言って笑った唐沢。
俺は絵莉衣を振り切る為必死に走る。
「しぃっ!…司衣!」
初めて名前を呼ばれた。思わず立ち止まってしまう。
「司衣、私」
「絵莉衣黙って」
「嫌だ!黙らない。司衣、私司衣が好き」
振り返り絵莉衣を見る。真剣な顔。思わず笑みがこぼれた。
「っハハハ!なに言ってんの?絵莉衣は俺なんか好きじゃないだろ。絵莉衣は幼なじみの俺、が好きなんだから」
「違う」
なにが違う?今まで何度も好きだと言われた。でもそれは恋人になりたい好きじゃなくて幼なじみとしての好き。
「司衣が好きなの」
今更なにを言ってるの。
「司衣が…好き」
「幼なじみとしてだろ」
「違う違うっ!私は、司衣が好き。愛して」
「待って。絵莉衣よく考えて。きっと絵莉衣は俺が居なくなって寂しいだけなんだよ。幼なじみが居なくなって、寂しいだけなんだ」
そう自分に言い聞かせた。これ以上、期待をしないように。