◇◆◇

―― キタザワ、もう俺お前の顔見れねえよ

そう言った日から早4ヶ月と少し。俺らは高校生になった。絵莉衣の顔を見れないと言ったのは俺なのに『離れたくない』その気持ちが強すぎて俺は、合格した第一志望の高校を蹴って滑り止めで受けていた第二志望の高校へ来た。

「ふふ、みよちゃんおかしいよ」

絵莉衣とは同じクラスになった。それが嬉しかった。でも同時に苦しかった。

「司衣」
「んあ」
「…目、死んでる」
「ははは。そっかあー…俺馬鹿だな」
「ああ」

同じ高校には唐沢もいた。唐沢は俺の後ろの席。絵莉衣を見ている俺を見てからかうのが唐沢の日課だった。

「唐沢」
「ん?」
「俺、馬鹿だ」
「さっきも言ったよ、それ」
「ああ。俺馬鹿なんだ」

絵莉衣の笑顔を見て安心して、絵莉衣の笑顔を見た奴に嫉妬して、絵莉衣の傍に居ない俺に苛つく。
あの時いつも通り我慢していれば、いつも通り笑って「よかったな」って言えば、今も絵莉衣の傍に居ることが出来たのに。

「俺本当に、馬鹿だ」





そして絵莉衣を愛していると、再度自覚した俺に出来ることは何もない。