◆◇◆

「しぃ、ゆうくんって言うの」

いつもならわかるしぃの怒った顔すらわからないくらい嬉しくて、1つ下のゆうくんをしぃに紹介した。いつもみたいに「またか」と言って貰えると思って。
でも。

「あっそ。よかったね」

そんな素っ気ない言葉が聞きたかったんじゃない。

「もぅ。なんでそんな素っ気ないの?しぃなんか嫌い」

ダン

なにがなんだかわからなかった。目の前のしぃは笑顔がなくて、変わりに冷たい目が私を見つめていた。

どうして。

「北沢、俺帰るわ」
「っ」

朝、来たばかりなのに、とか、なんで怒ってるの、とか、どうしてそんな目で見るのとか。いっぱい聞きたい事はあった。けど、何より一番気になったのは、「エリー」じゃなくて、「キタザワ」と呼ばれた事。
教室からカバンを持ち出るしぃを追いかける。

「しぃっ」
「北沢、俺にもう、話しかけるな」

な、んで。どうして。そんな言葉は声に出せなかった。ただ、涙が出てきた。
後ろから追ってきたゆうくんにそっと抱きしめられ、ゆうくんの胸で泣いた。




しぃ、私、しぃがわからない――。