「はい!」

キャプテンの後を追う彼の背中にはまだ、背番号すらつけられていない。


去年この学校に入学したばかりの私たちに待ち受けていたのは、高校野球の厳しさだった。


まだ左投手としての練習を始めて、数ヶ月しか経っていないアキのポジションはピッチャー。人並みにはボールを投げられるようにはなっていたけれど、前みたいな投球はできなかった。



けど、いま、やっとアキにもチャンスが与えられたんだ!


ミットを構えたアキの横顔からは、緊張していることがわかった。軽く2、3球肩慣らしに投げただけなのに額には汗が光っていた。


「・・・ア、キ?」

それは一瞬のことだった。