けれどアキは、そんなことなんて全く気にせず、投球を始めていた。

アキの球は、誰から見ても、よく走っていた。


「…勝てる」

心からそう思った。

2アウトランナーなし。

今日のアキなら、誰にも打たれる気がしない。


「走れっ!!!」

そう言ったのは、相手のチームだった。
キャッチャーはボールを取りに後ろを向いた。

…いわゆる、振り逃げ。


「セーフ!」

審判の声が響いた。


2アウトランナー1塁、バッターは代打。


――田宮龍我。